リアルタイムで知っている人ではなく、この時代の音楽やら映画は70年代半ばになってから追っかけた私。だからその時代の風を肌で感じることもなく、彼女をモデルにした79年のベッド・ミドラー主演「ローズ」でこんな人なんだな、というくらい。ベッド・ミドラー迫真の演技も当時はまじめで純粋な(?)私にはあまり好感が持てず、したがって映画の後、わざわざジャニス・ジョップリンのレコードを聴てみよう、と思うこともなかった。
さてこの座談会、ジャニスが世に出てから出会った恋人の中から選び抜かれた4名が、40年あまりの年を経てサンフランシスコに集い彼女との恋愛を語り合う。
4人の中では一番最初の恋人は同じバンドのビッグブラザー&ホールディングカンパニーのギタリスト、ジェームス・ガーリー。彼は妻子持ちで結局2週間ぽっきりで別れることになってしまう。その妻ナンシーにおどろいた。ビーズ作家であった彼女を紹介した写真、スッピンで片方の胸がブラウスからポロリン。(ほかに写真なかったのか。)一筋縄ではいかない人々が集まりあの音楽を作っていたのだな、と改めて感じた次第。後に彼らはバンド仲間と一つ屋根の下に住み、ジャニスはジェームスへの思いを抱きながらも、ナンシーと友人になったという。
2番目の彼氏は反体制の旗手として知られたシンガー、カントリー・ジョー・マクドナルド。彼にはジャニスとの間には苦い思い出がいっぱい、思想的には一つも共通点がなかったという。次から次に出てくる真実に驚いてか、他の3人が笑いながら話していても真面目な面持ちで言葉すくな。今のカントリー・ジョーはウッドストックのころの彼とは全く別人のようになっている。40年たてば、人間、生まれ変わるのかも。
3番目の彼氏ギタリスト、サム・アンドリューはこの座談会の進行役を務めていて、彼女とは深い関係が短かったせいもあるかもしれないけれど、淡々と客観的に話を進行。でもところどころ僕が友達として一番付き合いが長いのだ、みたいなプライドがなんとなく見えたような気がしちゃう。
最後の恋人、ブラジルで出会ったデイビッド・ニーハウス。彼は、僕が最後と信じていると言い(実際は彼の旅行中にジャニスはほかの人と婚約し、彼と再会する前に死んでしまうのであるが)、なんとなくジャニスに冷たいカントリー・ジョーに怪訝なまなざしを向ける。彼女の思い出を涙目で語る彼の今の顔にはブラジルで彼女と写した写真の面影は、もう、ない。月日は本当に容赦なく過ぎていく。
何をもって4人はこんなに自由に彼女について語ることができたのか。4人のはっきりした記憶、それを語る飾らない言葉には、彼らのジャニスへの気持ちがあふれている。まるで恋愛映画ような素晴らしいドキュメンタリーを見せてもらった。
…いいなぁ、4人も集まってくれて。
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