テレビでお話している川上さんがとてもチャーミングだったので、その日のうちに本屋で買ってきた。独特な文体については既にあちこちの書評に書かれている通り。
その終わりそうで終わらないけどすとんと終わる長い一文は、たとえば映画でのワンシーン・ワンショットのよう。つらつらと句点を読みつないで行くと、頭の中で色やら匂いやら姿かたちが思い浮かび、そんな空想の中にフラッシュバックしてくる自分の記憶。どこにしまってあったのか、というような懐かしい断片がよみがえり、一語一句が我が事のように身に沁みる。
緑子と巻子の卵まみれのクライマックスには胸が締め付けられる。私の中の緑子はいつ巻子に変わって行っちゃったのだろうと(あ、豊胸はしたくないけどね)、なんだか涙が出そうになった。極めて個人的なことのようで、実は普遍的な世界が、淡々と誇張することなく、優しく、そこはかとないユーモアで綴られている。読み終わったあと、ありがとう、と言いたくなった。
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