KAKUTA主催、桑原裕子作・演出。
片田舎のタクシー会社。経営者である父親の家庭内暴力から3人の子供を守るため、こはるは夫を車でひき殺してしまう。刑期を終えてしばらく旅をして15年くらいで家に帰ってくる、と言い残して出頭した。
あれから15年それぞれ30を超えた子供たち、長男は奥さんと別居中、次男は昔ヤンキーいまはプー太郎、長女は毎日飲み歩いている。そんなわけでタクシー会社は、親戚、友人、昔漁師であったという運転手堂本で回っている。そこへ約束通り帰ってくる、こはる。こはるの知り合いという得体の知れない”日本人”ヨシムラも、タクシー会社にいついてしまう。ぎこちないこはると子ども達。堂本の不可解な行動。
あらすじを読むとクライ。しかも登場人物は全員真面目。しかし実に”明るい”コメディーなのだ。これはひとえに脚本のミクロの部分の勝利。堂本の過去、子供たちの感情、こはるの叫び、ヨシムラの断髪がすべて絡み合うラスト、脚本のマクロの部分の勝利。またメリハリの効いた演技、キャスティングも成功。
否応なしに起きてしまったことをどうやって消化していくか。なかったことにできない「ひとよ」をもてあます人々。同じ時間を共有しながら、同じように受け取る人間はひとりもいない。しゃべっている言葉も不可解、国籍さえ不明のヨシムラ、彼は登場人物全員が抱える、どうしていいか分からない感情のメタファーか。このヨシナガ役の成清正紀さんがいい。大げさでなく、しかも印象深く、実に面白い。小春役の岡まゆみさんを始め全ての俳優が、飛び出さず、しかし個性豊かに重いテーマを愛情深く演じている。
こういう芝居を見ると母国語が日本語で本当によかったな、と思う。
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