ちょいと皺が目立つけどやっぱりステキ |
ジャックは美しい自然に囲まれ、中世の面影を残すカステル・デル・モンテという古い町に身を隠す。そしてパヴェルから、潜伏中の仕事として狙撃ライフルの制作を依頼される。他人との関わり合いを拒みつつも、ベネデット神父(パオロ・ボナチェッリ)や娼婦クララ(ヴィオランテ・プラシド)と恐る恐る淡い交友を持ち始める。しかしここにも彼をつけ狙う殺し屋が現れ、疑いや不安が膨らんでいく。狙撃ライフルも完成し、これを最後の仕事として引退しようとするジャック。誰が味方で誰が敵か、空気がピーンと張り詰める。
G・クルーニーはオーシャンズみたいなこじゃれた脱力系のワルモノではなく、腕はいいけれどいつも何かに脅えて緊張状態にある役どころ。常に戦闘状態なわけで、頼れるのは自分だけ。懸垂(ムキムキ!)、腹筋運動(軽々!)、柔軟体操(柔っ!)も「どうよ」とばかりに見せてくれるG様。しかし、ジェームスボンドのように不死身には見えず、安心していられない。カメラがジャックを狙うスナイパーの目線のような動き、例えば遠くから主人公を捕らえたアングルになると、何かが起きそうでキンチョーする。人気のない不気味な静けさの漂うシーンも心臓に悪い。出来上がったライフルを渡す場面、今までいた人たちが立ち去って、ジャックがひとりぼっちに。『俺たちに明日はない』のラストシーンが頭に浮かび、手に汗握る。
ボッティチェリの絵から抜け出したような ヴィオランテ・プラシド |
クララ役のヴィオランテ・プラシドはとっても美しく、顔だけでなくその四肢に至るまで彫刻のようだ。それだけにただの娼婦には見えない。神父役のパオロ・ボナチェッリはなんだかマフィアのボスに見えなくもない。アメリカ人のジャックには中世の町並みと同じくらい、そこに住む人たちは自分からは遠い人種に見えたのだろう。その辺りも物語のテンションをあげる。
音楽はドイツ人歌手のヘルベルト・グレーネマイヤー。私、この人の大ファンでクレジットで名前を見たときはコーフンした。静かなピアノの音が映画全体をやさしく包んで素敵。
激しいアクションもCGもないだけに、よけい臨場感が増す。渋い。
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