2011年9月12日月曜日

ゴーストライター The Ghost Writer

ロマン・ポランスキー監督。

在任時に起きたイラク戦争の人質拷問問題で追い詰められている元首相ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を書いていたゴーストライターが自殺。その後任のゴーストライターに-名前がない-(ユアンマクレガー)が雇われ、ラングがこもっているアメリカの孤島に行き、仕事を仕上げることになる。

政治に積極的な妻ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)と少々頼りないラングの関係はクリントン夫妻のようでもあり、ラングのノー天気さはブッシュ氏のようであり、アメリカに無条件で同調したブレア氏のようであり。また、40年近く前の未成年に対する虐待で今だアメリカの地を踏めない監督本人か。

全体は、雨が降り、湿った潮風が落ち葉を飛ばし、空は灰色、全てが陰鬱な世界。なんの戦略ももたないゴーストライターは思い切った行動に出る。が、そこから先が続かない。自分の身を守るために、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ。これが、笑えないのだ。彼はアメリカ映画の中のヒーローではないわけで。

献身的な秘書のアメリアをセックス・アンド・ザ・シティーのサマンサ役で知られているキム・キャトラルが演じている。キャトラルがアメリカ人と思っていた私は、似ているな、と思いながらも彼女だと思っていなかった。カナダに長いこと暮らしているそうだけど、リバプール生まれのイギリス人。少々薹が立った超仕事ができる、しかしどことなく色気を残したアメリア像が見事。

ルース(奥)とアメリア(手前)
ラング婦人のルース役、オリヴィア・ウィリアムズは映画「ピーターパン」でもし綺麗なお母さんコンテストがあったら間違いなく一番であろうというような、ウェンディのお母さん役で初めて見た。最近ではTVの「ドールハウス」や映画「ハンナ」にも登場。それぞれ全然違う役を演じている。今回は、ティルダ・スウィントン並みにコワイ。イギリスは女優の宝庫だなぁ。

ピアーズ・ブロスナンはその素敵さが、主役では無い時にキラキラと光る。脇役タイプではないのに。ある政治家の空っぽさを絶妙に出している。ユアン・マクレガーの英国風ジョークとうまくピンポン。

欧米の政治に詳しければツボが沢山ありそうだ。わからないなりに、すぐ隣りにあるであろうこの世に渦巻く不安を、じんわりと感じることができる。

2 件のコメント:

  1. ロマン・ポランスキーというとシャロン・テイト事件を思い出してしまいます。ショッキングな事件でした。

    『ローズマリーの赤ちゃん』のぞくっとする怖さも忘れられません。
    最近の作品は観ていないのですが
    『戦場のピアニスト』は感動しました。
    ユダヤ人で母親をアウシュヴィッツで亡くしたそうですね。ポランスキーにとっては深い思いを込めた映画なのでしょうね。

    「ゴーストライター」も観てみたいです。

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  2. そうでした!最後に見たのが「オリバー・ツイスト」で、ちょい昔見た「赤い航路」が頭に浮かび、「戦場のピアニスト」忘れていました。
    母親と妻という人生で一番近い女性と悲惨な別れや、戦争、逃亡、逮捕。一人で映画何十本分もの人生を生きているような人生ですね。

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