前作「マリー・アントワネット」に続く、ソフィア・コッポラの最新作。イタリア・ベネチア国際映画祭で、金獅子賞を受賞。有名人の華やかな仕事の世界と退屈な私生活を若い女性との心のつながりを通して淡々と描く手法は、その前の作品「ロスト・イン・トランスレーション」を髣髴とさせる。
ジョニー・マルコ(スティーブン・ドーフ)は売れっ子のハリウッド俳優、表向きは華麗な生活を適当に流している。でも、私生活ではセレブ後用達のホテルでポツリと寂しく身の置き場もない感じ。別れたガールフレンドのもとで暮らす娘のクレオ(エル・ファニング;ダコタの妹)が画面に登場するまで、このつまらなそうな彼の生活が、長くセリフもなく淡々と続く。おそらくそれまで娘のクレオにもそれほど関心がなかったのだろう。しかし11才になったクレオのスケートをする姿を見て、娘の成長に目を見張る。父とは別居、またそれほど家庭的ではなさそうな母と暮らすクレオは、決して幸せいっぱいの子どもではない。
そんな親子が感傷的にならず、相手を傷つけることもなく、一歩引いて穏やかな大人の付き合いをしている。クレオが徐々に自立する姿は、料理をするほほえましい姿から優しく読み取れる。
淡い光の中、透き通るような少女の白い肌と金色の髪は、まるで絵画のよう。ソフィア・コッポラの描く少女達は、「ヴァージン・スーサイズ」から一貫してはかなげだ。かったるい無味乾燥な堕落した生活を送るジョニーを、娘の存在がかろうじて”まとも”な人間に引き止めてくれる。子どものもつ崇高な美しさは何よりも雄弁である。対照的に言葉が飛び交う虚栄の世界(記者会見のように)。切実な思いを胸にジョニーはクレオの母に電話する。しかしその声はまるでホテルのレセプションと変わらない。
これと言って大きな事件が起こるわけでもないけれど、ソフィア独特のジョークの世界は健在。ジョニーとクレオが授賞式に参加するためにイタリアへ行くくだり。イタリアにはイタリアのショウビズの世界があり、それが結構笑える。
2人が車に乗っているシーンを見て、ヴィム・ヴェンダースの「都会のアリス」を思い出した。
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