「・・・・これといった派手な仕掛けはなく淡々としているのだが細部に神経が行き届き、やたら感情を煽るでもないのだが深く感動させる。・・・それはいいのだが、大きな問題がある。音楽がヘタウマなのだ。よく言うと素朴、悪く言うと素人っぽい。白たま(全音符のこと)にピアノがポツポツみたいな薄い音楽が主体だから映像を邪魔するようなことはない。しかも監督自ら作曲することが多いので映像と音楽の呼吸感も見事なものだ。だがそれは両方兼業(特に近年)する彼にしかできないことで、修行を積んで来たプロの作曲家にヘタウマ風に書けといっても無理なのだ。この手の音楽が主流になったら大変・・・。
・・・・冒頭のクレジットに流れるメーンテーマはフレットレスペースのシンプルなメロディーでこの映画の要である。 正直ぼくはこの手の先の読めるメロディーが嫌いだ。・・・その後6シーンにわたって流れるのであるがだんだん良く聞こえてくるのである。とくにラストシーンではイーストウッド自身が1コーラス渋く歌いそのままジェイミー・カラムの歌でエンド・ロールにつながっているところが感動的なのだ。うまい、ちょっと参った。冒頭に流れたものがストーリーの進展とともに成長していくのである。これは誰も意識していないのに確実に感動を煽る。しかもイーストウッドの場合は下品ではない。むしろ抑制をきかしている分、映画全体の品格を上げている。」
ピアノポツポツの曲が、全体を通してどのように進展してエンディングにつながっているなんぞ、素人はゼンゼン気がつかない。言われてみればその通りで、音楽を意識せずに静かに感動が盛り上がっていくのだ。それもお涙ちょうだいの感動の押し売りではなく。最後のイーストウッドの歌声には泣かされた。初めはガラガラ声で歌が始まったのに、グラン・トリノが風景の中を走り去っていくころには声が若くなり、あれれ?。”私でも”この部分はかなり印象に残った。で、映画と美しいメロディーに一目ぼれならぬ”一聞きぼれ”し、iTunesでこの曲を即買った。
それから、映画音楽にも”ヘタウマ”がある、というお話は新鮮な驚きだ。 う~ん、確かに、ジョン・ウイリアムズ(スターウォーズ、シンドラーのリストなど)やジェームズ・ホーナー(タイタニック、アバターなど)は音楽だけでキャラクターとなるくらい完璧で圧倒的だけど、確かにいろんな意味で”コイ”。
久石さんは最後に「基本的には映像を邪魔しないものに主眼が置かれているのは『映像と音楽は対等であるべきだ』と考えているぼくにはやはり物足りない。」とも書かれているけれど、これを読んで、彼の音楽とイーストウッド監督のコラボレーションが実現してほしい!と思ったのは私だけだろうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿