2010年4月4日日曜日

久石譲さん「ベニスに死す」を語る

日経夕刊で久石譲さんの「音楽と映像の微妙な関係」が始まった。究極の映画音楽解説である。

「(映画とふつうの音楽の違い)“ふつう”の音楽はそれだけで100%、映画なら映像と音楽を足して100%になるようにしています。理想は映像と音楽が100%ずつ発揮したうえで成立する映画なのだが、そんな不可能なことを可能にした作品をぼくは知っている。 『ベニスに死す』だ。 
(中略) 
もちろんマーラーがこの映画のために書いたのではなく交響曲第5番の第四楽章アダージェットとして書かれた名曲を使用しているので厳密に言えば映画音楽ではない。が、間違いなくここでは映像と音楽がたしあうのではなく、掛け算にしてみせて我々の度肝を抜くのである。
(中略)
冒頭の船のシーンを見るだけでわかるように、マーラーの切々とした孤高の音楽と画面の隅々まで神経を配った無駄のない映像が、晩節を迎えた老作曲家を通し人間というのもを、人が生きるということを描くのではなく深く体感させるのである
(中略)
原作では主人公グスタフ・アッシェンバッハは老作家なのだが、映画では老作曲家に変更している。しかも風貌を含めて限りなくマーラーのイメージに近づけていて追い打ちはマーラーのアダージェットなのである。この主人公がアダージェットの作曲家であるグスタフ・マーラーだといわんばかりなのだが、このイメージをだぶらせるような演出こそが最大のトリックであり最大の映画的効果なのである。ヴィスコンティ恐るべし。」

音楽と映像に鳥肌が立つくらい心打たれながらも、その気持ちをどうもうまく言い表せなかった。モザイクを組み立てるように、”老い”や”若さ”や”美”やそんな断片を作品の中から拾い集め、私なりにこの映画への思いを考える努力をしたのだけれど・・。そんなときにこの久石さんの一言で納得。説明できないことを”深く体感”させられていたのだ。答えを導いてくれた久石さんも、作曲だけでない、恐るべし。

それにしてもビョルン・アンドレセンは美しかった。当時の少女漫画に出てきた多くの美男子は彼がモデルだったのよ。

6 件のコメント:

  1. あきざくら2010年4月5日 18:37

    わ~ ビヨルンアンドレセン!!
    今でも心を掴まれる気がします。 そうでした。池田理代子、青池保子マンガの美少年・・この少年はどうなったのか気になる時もあったけど、まさに「あの映画に生きていた」少年だったのですね。
    久石さん凄い Angelaさんも凄い。

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  2. あきざくらさん!懐かしいですよね。
    そうなんですよ!他に、木原敏江は「登場人物後はビョルンがモデルです」って公言してましたし、萩尾望都の「トーマの心臓」のオスカーなんて似ているなぁ、と勝手に思ったり。名香智子もそうかな。オスカル様は絶対そうだと思っているんだけど。(マンガしか読んでなかったのがばれまくり。汗)
    実はビョルン少年が後にどうなったかネットで調べたら、ありました、写真。ただ一言、人間変われば変わるモンです・・・。

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  3. 懐かしいです〜〜〜♪
    きれいだったですよね!
    彼の今の写真も見たんですね!

    少女漫画の原型ああ〜〜わかるような気がする♪
    オスカルの髪型にそっくりですよね。

    「ベルバラ」は時々見た事があります。
    主題歌が好きで...
    「♪...名も知れず咲いている花ならば〜〜♪」
    出だしを忘れました!

    私は母親役のシルヴァーナ・マンガーノが好きで
    うっとりしたのを憶えています。
    パゾリーニの映画にも常連の女優さんですよね。

    久石さんの記事読ませていただいて嬉しいです!
    また楽しみにしています♪

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  4. エリリンさん、こんにちは。
    そうなんです、ビョルン・アンドレセンでぐぐったら今の写真が出てきたのですが、美しい思い出はそのままにしておいたほうが良いかな、と・・・。

    パゾリーニですか、さすがエリリンさん!渋いですね。彼が脚本を書いた「カリビアの夜」は見たことがあるのですが、監督作品は見たことがないんです。何かお勧めはありますか?昔スクリーンで「ソドムの市」の記事を読んでから、私にとっては禁断の監督になっております。

    シルバーナ・マンガーノといいグスタフの奥さん役のマリサ・ベレンスンといい、どこを探してもいないような美女さえもかすむあのビョルン・アンドレセンの美しさはいったいナンなんでしょう・・・。

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  5. パゾリーニの作品は衝撃的なので
    あまりおすすめはできませんが....

    高校生の時フェリーニの「サテリコン」という映画を観て衝撃を受けました。
    なんだかふらふらと魅入られてしまったのです。

    パゾリーニに出会ったのは
    ピエール・クレマンティという俳優が
    「豚小屋」に出ているので観たのが始まりでした。
    「昼顔」にも出ている俳優です。
    高校生の頃は好きな俳優で映画を選んでいたんですよ〜!
    こちらも大変に衝撃的な作品で
    よくは今でもわかりませんが
    どちらも今までに観た事のない映画で
    惹き付けられてしまったんですね。

    それから「アポロンの地獄」「テオレマ」
    「カンタベリー物語」「デカメロン」などなど観ました。
    映画の内容はあまり憶えていません。
    この世のものとは思えないような世界でした。
    チョ−サー原作「カンタベリー物語」は可笑しみのある映画でした。
    中世の世界に興味を持ち出したのもこの映画の
    影響です。

    「奇跡の丘」はパゾリーニの作品の中では異色な作品でキリストの生涯を史実に忠実に描いていて
    感動しました。

    テレンス・スタンプも好きで
    (好きな俳優がコロコロ変わりました,あの頃)
    「テオレマ」は観たのですが
    もう一度観てみたいなと思います。
    テレンス・スタンプは今でも好きです♪

    マリサ・ベレンスン〜〜も懐かしい女優さんですね。
    シルヴァーナ・マンガーノって
    「にがい米」の時(デビュー作なのかな?)はふっくらしていて
    健康的な美人だったんですよ!

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  6. エリリンさん、
    ディープに観賞してらっしゃいますね、勉強になります!『奇跡の丘』辺りからいってみようかと思います。ありがとうございました。

    テレンス・スタンプは私も好きです。ホントに『(カッコイイ人を代表して)イギリスから来た男』。アネゴ役もOKですし。

    『にがい米』もまだ観ていません。観なくてはいけない映画がまだまだたくさん・・・。がんばりまっす。

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