2010年4月14日水曜日

イカとクジラ

監督、ノア・バーム(2005年)。

 1986年、ブルックリン。父はスランプ続きで仕事がないけれどプライドは人一倍高い作家。母はニューヨーカー誌にデビューの奔放な新進作家。16歳の兄ウォルトは父に心酔、母の奔放さに我慢ならない。12歳の弟フランクは父のプライドがうざったく、何があっても母が好き。両親が離婚することになり、兄弟(猫ちゃんも)は共同監護という形で父の家と母の家を行ったり来たりの生活が始まる。やがて弟は学校で奇行を繰り返し、兄も盗作騒ぎを起こしてしまう。ばらんばらんのかみ合わない親子夫婦のブラックほどではないけれど、グレーなユーモア(?)で綴られた、決してカナシイだけではない物語。

父親の意見は至極まっとうで教養にあふれているはずなんだけど、Fワード連発、無職、という具合に現実とかみ合わない。母親もとりあえず思春期のこどもには言わないかな、と思うような浮気や恋人の話を包み隠さず話す。息子2人のことは観ていてつらい。 特に12才の弟の奇行には女系家族に育った私にはあ~んぐり。まだまだアオい兄の母親やガールフレンドに対する態度にも説教したくなる。観ている私の”同情”やら”親近感”やら”嫌悪感”は、4人の間を行ったり来たり定まらない。どこまでもあれれ?の家族だし、正直4人とも好きになれない。ところが、どの登場人物も軽蔑できないどころが、だんだん愛情さえ湧いてくる。脚本の妙。

父親は『愛と追憶の日々』というより『Mr. ダマー』のジェフ・ダニエルズ、母親は『ミスティックリバー』のローラ・リニー。2人とも見事にNYの知的階級の滑稽さを表現。チョイ役でアンナ・パキンとウィリアム・ボールドウィンがとってもいい味。そしてこの手の映画を見るたびにいつも思う「どこからこんなこどもたちを探してくるのだろう」と、実にうまい・・・。
 
決して心地よくない棘のある会話に落ち込んだり、笑ったり、落ち込んだり、落ち込んだり。全てが日常の出来事で、映画の終わりも昼寝で一日が途切れたように終わってしまう。しかし映画全編を何度も反芻させてくれるくらいの印象的なラストシーン。

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