2010年4月16日金曜日

久石譲さん「2001年宇宙の旅」を語る

「わかりやすいということは決して良いことではない。難解な映画や音楽、絵画などに接したとき「これは何?」という畏怖にも似た疑問がおこる。だから頭を働かせる。わかろうとするからだ。あるいは自分の感覚を最大限広げて感じようとする。そこにイマジネーションが湧く。もちろん優れた作品であることが前提だ。何も大衆性を否定しているわけではない。その両方が無い作品に接する時間ほど無駄なものはないと考えるのだが、作る側としてはそのさじ加減が難しい。スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」はその答えの一つである。

・・・謎の物体「モノリス」をめぐる展開だが一貫した主役はなく各シークエンスも関連性に乏しくわかりづらい。・・・・ぼくは最初これは映画ではないとさえ思ったのだが、何度か見ていくうちに映像と音楽の関係性に圧倒され、今ではぼくの「名作中の名作」である。

・・・映画全体の音楽は15曲(メドレーは一曲として)で数は多くはないが一旦なり出すと長く使っている。その関係は映像につけるのではなくてむしろ映画自体を引っ張っていくエンジンのような役割だ。

・・・まず驚くのは宇宙航行にヨハン・シュトラウス2世の「美しき青きドナウ」を使っていることだ。無重力の漆黒の宇宙に浮いた宇宙船がワルツのリズムに乗ってあらわれたときは仰天した。・・・なんといっても衝撃を受けるのはジェルジ・リゲティの曲の使用である。20世紀後半のもっとも重要な現代音楽の作曲家だが難解である。・・・圧巻は木星と無限の彼方(異次元への突入)で15分にわたり流れる3曲ほどのメドレー。多くの監督が望む大衆性とはま逆の姿勢をキューブリックは音楽でも貫く

・・・決してわかりやすい音楽と映像との関係ではないが、そこには新鮮な「何?」が必ずあり、我々のイマジネーションを駆り立てるのである。」

この映画、他の映画とは一線を画しているとはわかるのだけれど、実は私、何べん見てもなんだかよくわからない。久石さんをして「難解な」ものなのだ、私のような凡人にはイマジネーションを駆り立ててくれればよし、としよう。そうと分かれば、ちょっとうれしい。それに、ず~っと考えていたら、ある日突然悟りが開けることだってあるかもしれないし。今回音楽に関しては大変重要な指針をもらったので、そこに注意して見てみよう。

天才は普通の人が畏怖の念を抱くような何かを、絵画で、音楽で、文学で表現する。キューブリックはそんな全てを拾い上げ、作品にしているのだなぁ。凡人の悲しさと気楽さを感じつつ、天才の孤独を想像してみる。

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