2011年6月15日水曜日

あめふらし 出久根育さんの絵

「あめふらし」は2003年プラティスラヴァ世界絵本原画展でグランプリを受賞。
6月9日の日経アートレビューを要約すると、

「その時代の服装や意匠の質感、そして光線の加減までを自らの解釈で丁寧に描いただけではない。例えば湖をバスタブに、カラスの止まり木は衣裳のハンガーと、絵には物語を超えたファンタジーが宿る。まるで演劇の演出家のような独特の解釈と表現で、欧州の人たちは新鮮な驚きを持ってグリム童話を再発見した。」

けがをしたキツネ
絵本の写真を撮ったのでゆがんでます
この「あめふらし」のお話は結構コワイ。プリンセスは求婚者に”かくれんぼ”をさせ自分(オニの役)が見つけることができなかった人と結婚する、というのだけれど、実は大変な千里眼の持ち主で誰でもどこにいても瞬時に見つけてしまう。見つかった求婚者はどうなるかというと、なんと無残にも首を落とされてしまうのだ。そうしてすでに97人の若者が殺されてしまい、もはや誰も怖がって求婚してこない。そこで久々に、主人公の若者と兄2人が名乗りを上げるが、兄2人はあっけなく殺されてしまい、困った主人公はどうにか2回までは見つかっても見逃してもらう、というルールをプリンセスから取り付ける。あの手この手を考えている時、カラス、魚、キツネの命を助ける。その動物たちの知恵をかり、プリンセスの目を欺こうとするのであるが、カラスと魚はあえなく撃沈、間一髪、キツネの知恵は若者を救う。

99人もの若者がお姫様に殺されてしまう、そんなダークな森の中、とぼけたようなポーカーフェイスの登場人物や動物が(ボッシュを思い起こさせるようなモチーフもちらほら)、渋い色彩を放ちながら静かに描かれている。

出久根育さんは2002年からチェコに移り住んでいるそうだ。彼女の周りには、物語に出てくるような森が沢山あるに違いない、と思う。


2 件のコメント:

  1. 先日のAngelaさんのに気を読んでから、私も図書館で借りて読みました。すっかりファンになりました。
    素敵な絵ですね!!
    出久根育さんはドゥシャン・カーライのお弟子さんだったそうですね。師匠の絵に影響を受けている部分もありますが独自の世界を切り開いたって感じですね。
    各ページに数字が書いてあるのをつい探してしまいました。99番まで。ないのもありました。
    ワイヤーのハンガーには驚きました。
    シュールですよね。
    王女のテーブルにもなるスカートがユニークです。

    「おふろ」面白いです。
    「ワニ」は絵は素晴らしかったのですが文があまり
    好きではありませんでした。
    「12のつきたち」吹雪の場面が圧倒的に美しいです。

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  2. ドゥシャン・カーライは知らなかったので、早速ネットで見てみました。このかたも面白い絵ですね。教えてくださってありがとうございます。
    絵を描く人は本当によくものを見ていて驚きます。目に見えるものも、見えないものも、じ〜っと。私はいっつも「なんとなく」の人で、ちゃんと見てないし、すぐ忘れるし。自分では見つけられないものをゲージツ家の目を通して、見つめ直してます。

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