よく言えば自分の世界に「生きている」悪く言えば「酔っている」27歳のアウトドアスポーツが趣味のアーロン(ジェームス・フランコ)。誰にも行き先を告げずに出かけた先で岩に右手をはさまれ動けなくなる。そして飲まず食わずで6日間、腕を切り落とし生還するまでのお話。
挟まれてもしょうがなさそうな、若者の軽さをJ・フランコがそれはまた上手に見せてくれる。それだけに、いつ挟まれるのかそればかりが心配で落ち着かない。で、やっと挟まれる、ほっとするのもヘンな話だけどこれで私の一つ目のハードルはクリア。一旦挟まれてしまったら、その先は重苦しーい時間が始まるのかと思いきや、ところがどっこい。その閉塞感が高まれば高まるほど、彼の心の中から情景が果てしなく広がり、画面は不思議な解放感に満ち溢れる。始めはなんだかな~、と思って見ていたアーロン君、「すべては自分の軽はずみな行動が引き起こしたこと」と実に謙虚に反省を始める辺りから、彼のことがだんだん好きになってくる。
そして、自分の腕をはさんだ岩を見ながら、「この岩は自分が生まれたときから、ずっと自分のことを待っていたのだ、いや太古の昔からずっと」とつぶやく。このシーンで、勇気を振り絞り(大げさだけど)映画を見に来てよかったと感じ始める。そんな後悔と切ない過去の思い出は観客の同情は集めても、それに反比例してアーロンからエネルギーを奪っていくようだ。が、そこに忽然と現れる未来へのビジョン、その光景はむくむくと彼に生命力=判断力をあたえる。
もりもりと復活したアーロン君、脱出最大の山場というか修羅場、これが第二のハードルで高い高い。映画とは分かっていても凝視するにはケッコウ勇気がいる。皮肉にもジェームス・フランコが迫真の演技を見せれば見せるほど、スクリーンから顔をそむけてしまう。やめて~!いや、やめたら死んじゃう・・・。やめないで~!うわわっ、そ、それも・・・。
そんなわけで、フランコ君が一番がんばったところを見ていない人がいっぱいいると思われ、それがアカデミー賞を逃した原因か?などど・・・。バキバキ(修羅場の音)とコワイ場面が終わってから、アーロンは自分を挟み、ぎりぎりまで追い込んだ岩に向かって言う、
「Thank You」
ダニーボイル監督の映画は、いつも究極の選択を見せてくれる。その選択は1人で下すものではなく、地球や宇宙の何もかもひっくるめた大きなエネルギーからもたらされている。
オープニングは超かっこいい。そしてジェームス・フランコ君、よくやった。
0 件のコメント:
コメントを投稿