監督:ウダヤン・プラサッド。2008年のサンダンスで上映されてからやっとこさ日本でも公開。
東京では銀座の東劇だけ。よく覚えていないけれど15年以上前、「東京物語」の英語字幕版をオットと見て以来だ。その間にすっかりシネコンが浸透してしまったが、東劇は時が止まったよう。切符売り場のお姉さんはとっても丁寧だし、コンセッションの従業員もきちっとしている。さすが松竹さんだ。何よりもその内装、ロビーは床から壁まで懐かしいにおいがいっぱい。なんとなくうら悲しい黄色いハンカチのディスプレイとロビーの一角を占拠しているマッサージチェアー(写真左奥)が何やら不思議な雰囲気を盛りあげる。観客の平均年齢も高そうだ。おそらく65、いや70歳は超えている、おおげさじゃなく。(ワカを除き)もしかしたら私たちでさえ一番若いかも・・・。
さて映画はすでによく知られた内容なのであらすじには触れないけれども、 一言で言って期待以上だった。まず特筆すべきはカメラ、映像が美しい。「キリングフィールド」と「ミッション」でアカデミー賞を受賞したクリス・メンゲスが撮影。うらぶれて、殺風景で、でもどこかやさしいアメリカ南部の風景は、登場人物の心情が投影されたように見える。貧しくて古いものが愛情深くうつされ、そこに愛すべきふつうの人間が一生懸命立っている。次々に映し出される美しい映像にため息。
花まるはゴーディ役のエディ・レッドメイン。またまたすごい英国人俳優登場。今年舞台では「Red」でローレンス・オリヴィエ賞とトニー賞を英米で受賞。名門イートン校でウィリアム王子と同級生、ケンブリッジを卒業というおぼっちゃまにはとても見えない。一つ間違えればタダのうっとうしい若者で終わりそうなところを、その人となりをまるまる理解させるだけの説得力を持った演技。オリジナルバージョンを見たときは、この青年役はうっとうしいままだった・・。ごめんなさい!オリジナルと言えば忘れてはいけない人、桃井かおりがモーテルの店番の役で登場。堂々としてる。 リメイク版での娘役マーティーンのクリスティン・スチュワートはちょっとすねた女の子を好演している。「トワイライト」のベラとあんまり変わらないけど。
主演のウィリアム・ハートには難しくない役柄だったであろうが、さすがと息をのんだのは、黄色いハンカチを見たときの表情。沈黙でセリフを語る、円熟の極みであった。
レトロな東劇で静かな物語。お勧め。
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