2010年6月23日水曜日

ドリームガールズ

2006年、監督ビル・コンドン。”コーラスライン”のマイケル・ベネット演出振り付け、1981年初演のブロードウェイミュージカルを映画化。

あらすじ
エフィー(ジェニファー・ハドソン)、ディーナ(ビヨンセ、ダイアナ・ロスがモデル)、ローレル(アニカ・ノニ・ローズ)の3人組は、コーラスグループ“ドリーメッツ”(シュープリームスがモデル)結成しオーディションに参加。そこで昼は中古車ディーラーを生業にし夜は(趣味で?)音楽マネージャーのカーティス(ジェイミー・フォックス)に見出される。スターだけれど女癖の悪いジェームズ・“サンダー”・アー リー(エディ・マーフィ)のバックコーラスとしてデビュー。

エフィの兄CC(キース・ロビンソン:ハンサムです)の作曲した"Cadillac Car"を”カーティスの創設したレーベル”レインボー・レコード”(モータウンがモデル)から売り出す。しかし黒人局ではヒットするもまだ差別が色濃く残る時代、白人が別バージョンにして曲を奪ってしまう。R&Bは白人局では流さないので、曲をパクッっても白人の視聴者にはわからないのだ。そこでおしりに火のついたカーティスは、音楽プロデューサーに本腰を入れる決心をする。中古車を全部売り払いさらにそのお金をギャンブルで増やし、白人のDJにワイロを渡して自分たちのプロデュースした曲を白人局から流すことに成功する。

この戦略は功を奏して彼らの曲は大当たり。さらなる白人社会への売り込みを考えるカーティスは、”ドリーメッツ”が白人受けする作戦に。声が軽くルックス抜群のディーナをリードに据え、 声&ボディともド迫力のエフィをコーラスにしたあたりからグループ内に亀裂が入り始める。スターだったジェームスもカーティスのもとでは本来好きだった歌が歌わせてもらえず、ストレスから麻薬に手を出してしまう・・・。

エフィを演じたジェニファー・ハドソンは圧巻。エフィが並外れた歌唱力であることが大事。なぜ彼女がリードボーカルを外されて腐ってしまったのか、どうして誰もが彼女にもう一度歌を歌わせたがったのか。歌がうまくなくっちゃ、すねた女の子の人情物語になってしまう。”Love You I Do” を聞いたときは涙が出てしまった。演技もよくって、素直になれないけど歌が大好きで何かを追い求める姿がタイトルに重なる。

ディーナが人気者にのし上がった理由も、あの超キュートなビヨンセを見れば十分に納得。ジェニファー・ハドソンがビヨンセをくってしまったようなことを言う批評があるけれど、私はそうは思わない。子どもと動物にはかなわないというけれど、新人相手にも時にはそうなる。出演者全員がそれぞれの持ち歌を忠実に解釈し、それぞれの卓越した表現力で歌うことにより、エフィとディーナがそのキャラクターにしっかり納まったのだ。

もちろん男性陣も分厚い演技力。ジェイミー・フォックスはもちろんのこと、エディ・マーフィは持ち味全開。ダニー・グローヴァー(プレイス・イン・ザ・ハート)もいい味出している。ジョン・リスゴーが怪しげな映画監督役でちらり。

抑圧された黒人社会の中でこそ生まれた”レインボー・レコード”であったかもしれないけれど、音楽と商売の間に横たわる本質的な問題は今も昔も変わらない。ショービジネスは過酷、数々の名曲がそんなテーマを彩る。半端でない強さに満ちた70年代のソウルがよみがえる。ジャクソン・ファイブらしきグループも登場、モータウン好きにはたまらない。亡きマイケル・ベネットにささげられたこの映画、劇中”コーラスライン”に出てくる鏡の舞台装置が登場、しびれた。

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