2010年3月19日金曜日

ココニイルコト

長澤雅彦監督、2001年。

広告会社で働く相葉志乃(真中瞳)は、上司の奥さんから手切れ金を渡され、さらに大阪に異動の辞令。仕事も生活も投げやり、仕事場では着ぐるみ着せられて広告の撮影、いよいよキレて勤務中抜け出して競艇へ。どこかのおっちゃんの止める手を振り切り、手切れ金全額を一番人気のない番号にかけたら、それが大当たりしてしまう。しかし仕事で競艇場に来ていた同僚の前野悦朗(堺雅人)に見つかり、換金もせずその場を後にする。やる気なしの日々、接待で失言、お得意さんの機嫌を損ねそうになるが、前野が助け舟。それからも彼は志乃を飲みに誘ったり(志乃は怒ってしまうけど)、プラネタリウムに誘ったり(志乃は寝てしまうけど)、仕事では何気に背中を押したり。鋭い洞察力と笑顔で、「ええんとチャイますか」と悟ったように言いながら志乃に寄り添う。
しかし前野は心臓を病んでいて入院。手術を勧める志乃に「君が僕の貯金を全部競艇でかけて勝ったら、そのお金で手術する。」という。もちろん志乃はスッてしまう。
・・・この後はまだ見てない人もいるかもしれないから書かない。

志乃も前野も大人なんだけど、まるで高校生の初恋を見るようだ。いや、友情というのかもしれない。ん~、ちょと違う。確かに職場の中には、恋愛とも友情とも捉えられない、いろいろな関係が存在する。2人が若い男女だからといって、無理やり恋愛映画と見る必要もない。お互いに何も言わずに相手を思いやり、何かに気づき、気付かされる。ソウルメイトの物語としてみるのがいいのかな。

そして、この映画のもう一つの主役は大阪。ひょうひょうと動くカメラは、ウルサイ街を静かに、雑然とした街を整然と映し出す。新しいものにも、古いものにも、どこにでもあるものにも、そこに映る全てのものに大阪のにおいを感じさせる。大阪弁もいい。ドスを効かせるだけじゃなく、人を思いっきり和ませる大阪弁の単刀直入な優しさや面白さが好きだ。主人公の言葉足らずの標準語も、大阪ではいいボケになる。特典映像で笑福亭鶴瓶の演技と言えない名演技が見られる。大阪の上司山田役の中村育二がいい味。

誇張もないし、泣いてくださいというのもなく、かと言って物足りないわけでもない。後味のよい、さらりとした佳作。

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