暮れも押し迫った30日、遠方からの客人を鎌倉に連れて行った。北鎌倉駅で降りて、円覚寺に入る。お寺の人たちが松飾でお正月の準備をしているが、人もまばらで空気がしんとしている。のんびり歩いていると、庭師さんらしき人がバンの荷台を開けて作業をしているのが目に入った。何気なく見ていると振り向いたその方と目が合った。するとバンの荷台から何やらサササッと手で拾い集め、「これあげます。ロウバイ。」と手を差し出した。あげるという言葉に本能的に反応して手を出す私。私の手にはパラパラと黄色い花。
「いいにおいしますよ。」
確かに何とも上品な甘い香り。
「お正月の飾りつけの枝から落ちたのだけど、お花を水に浮かべておくだけでも香りが楽しめますよ。」
何と素敵な贈り物。お恥ずかしいことにこの花を私はぜ~んぜん知らなかった。注意して見てみると鎌倉のあちこちにこの花が咲いている。
庭師さんから聞いたときは、ロウバイを勝手に”老梅”と頭の中で変換していたが、”蠟梅”と書く。だからかどうかわからないけれど、黄色い花弁は蠟のように透き通っている。土に落ちた落ち葉と蠟梅が、絶妙な冬の香りのハーモニーを醸し出しだす。透き通った空気とほのかな香りを楽しみながら鎌倉の町を歩いた。
0 件のコメント:
コメントを投稿