2012年2月5日日曜日

人生はビギナーズ  Beginners

オリバー(ユアン・マクレガー)は5年前、母に先立たれた父ハル(クリストファー・プラマー)から、自分はゲイなのでこれからゲイとして人生を謳歌したいと告げられる。そしてその父はがんを患っており時間が無いと言うのに、何一つ父のことを理解していなかったことを知る。オリバーは自分の子どもの頃の母や豊かではあるけれどどこか不完全な家庭、人生の最終章をあるべき姿で幸せに暮らす父を回想する。しかしその喪失感であったり、子供の頃からの心のわだかまり等が、38になって恋したアナ(メラニー・ロラン)との関係に縺れてくる。

モヤモヤしたものを抱えたまま大人になったオリバーを、ユアン・マクレガーがもの静かに繊細に演じている。アナ役のメラニー・ロランは香り立つような美しさ。はかなげで、それでいて存在感のある透明な美しさはおとぎ話の主人公のようだ。クリストファー・プラマーの演じるハルの、母性的な愛に宿るあっけらかんとした明るさと儚さが悲しい。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。オリバーの個性的な母親を演じたメアリー・ペイジ・ケラーのどこか諦めきれない表情や、ハルの恋人アンディー役を演じたゴラン・ヴィシュニックの色々と乗り越えて来たのだなと思わせる瞳が印象に残る。

柔らかな光、整然とした室内、主人公が書くシンプルなイラスト、音楽に至るまで、実にセンスのいい佳作。監督のマイク・ミルズは自分の体験をもとに映画を作成。アナとの関係にポツポツ織り込まれる父や母との回想は、オリバーが頭の中で答えを探す方程式のようだ。こうして何かが起きたとき、過去を咀嚼できるひとが羨ましい。私は「点」で生きているような人だからなぁ。

人生はいつまでたっても「初心者」・・・。確かにそう、リハーサルなんてできないものね。そうよ、初心者のつもりで前に進む、いくつになっても。ビギナーと思えば、いいのよね、それで。

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