2011年11月7日月曜日

フェア・ゲーム  Fair Game

CIAエージェントのヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)は調査の結果、イラクには核開発の事実も余力も無いと、CIA幹部に報告を上げていた。さらに多角的に判断する為、ウランの売買、流通からも大量破壊兵器製造の可能性を調べるため、CIAは元ニジェール大使のヴァレリーの夫ジョー(ショーン・ペン)に調査を依頼する。現地に赴き大量ウランの売買の事実がないことを確認し、彼もまたイラクで核開発の事実がないという報告書を提出する。


にもかかわらず、大量破壊兵器の存在を理由に政府はイラクに宣戦布告、それに激怒したジョーはNYタイムズに自分の作成した報告書を寄稿する。それを良く思わないアメリカ政府(副大統領筋は)、ジョーが大量破壊兵器の存在を否定する報告書を書いたのはCIAの妻がまとめた報告書の裏付けのために個人的に頼まれたためであり、また、このような状況でイラクを弁護するのは反愛国者であるとマスコミに報道させる。そしてヴァレリーは、本来ならば決して明かされることのないCIAエージェントとしての身元をジャーナリストにリークされ、世間に暴露されてしまう。(詳しくはこちらが参考になる 村上博美@JMM

マスコミの報道は、大量破壊兵器が有ると信じる人=愛国者、大量破壊兵器は無いと主張する人=反愛国者、という構図を作り上げ、イラク戦争の大義となった大量破壊兵器の有無から、問題のすり代わりが起きてしまう。政府(副大統領)の夫妻への反応は、以前認知的不協和について書いたけれど、まさしくそれ。

激しい報復を受けた夫妻はもちろんお気の毒だけれど、なんの罪もないイラク市民が爆撃の中、身をひそめる姿はもっと悲惨だ。かの地では今もまだ多くの問題を抱え、人々の命が失われていることを考えると胸が痛い。今では日本でほとんどイラクに関しての報道を見ることはないが、日本の時の総理が事実確認の前に、まっ先にイラク攻撃に賛同したことを忘れてはいけない。時間も距離もはるかかなたの出来事だけど事実は消えないし、その事実は今も見えないところで糸を引っ張り合っているだろう。

ヴァレリー・プレイムご本人
この映画の正確性についてはいろいろ論議があるところだけれど、「グリーンゾーン」も含めほんの数年前の出来事を映画化したことには舌を巻く。ショーン・ペンはこういう役どころ、きっと大好きに違いない。ナオミ・ワッツも本当のスパイはこんなふうなのだな、と思わせる才色兼備さをさらりと体現。
そして、本物のヴァレリー・プレイムさんは美しい人だ。やっぱりいるのだ、美しすぎるスパイ。

0 件のコメント:

コメントを投稿