2011年11月1日火曜日

ウインターズボーン Winter's Bone

こーんなさみしいところがあるのかと思わせる、アメリカ中西部の森の中の貧しい田舎町。父は疾走、母は精神を病み、3度の食事にも窮している一家。17歳の少女リーは、幼い弟妹を養うため、一家の大黒柱として懸命に生活を切り盛りしている。そんなとき保安官がやってきて、父は家や森などの不動産を保釈金の担保にしており、本人が出頭しない限りすぐにでも家を出ていかなくてはならないことを告げる。生きているにせよ死んでいるにせよ父親を見つけないことには、路頭に迷ってしまう。しかし、親族はじめ村人たちには父親の存在はタブーであるようだ。容赦なくリーを追い払う人々、傷つきながらも幼い弟妹のために危ない世界に足を踏み入れるリー。しかし彼女の一途な勇気はそんな暗闇の人々をも動かし始める。


17才とは怖いもの知らずでまっすぐで、処世術を身につけるにはまだ早い。悪事には手を染められないが、軍隊であればと志願する。貧困の犠牲になるのは若者である。しかしその軍隊にさえ、年齢と家庭環境ゆえに入隊を断られてしまう。彼女にとってはどちらも戦場。


狩猟で捉えたリスの捌き方を幼い弟に教えるリー。リスのお腹に手を入れるのを嫌がる弟に、世の中はもっと厳しいことがたくさんあると叱咤する。その言葉が予言のように暗い水辺で彼女の身に降りかかる。じぶんが弟に諭した以上に世の大人たちは厳しく容赦ない。せっかく助けてもらっても、その乾いて蕭然とした情けには身の毛もよだつ。


保釈金問題が解決してもリー一家の生活が良くなるわけではない。しかし、修羅場をくぐったあとのあの穏やかな安らぎは、未来に希望さえ感じさせる。そして、逆境に立ち向かうリー屈強な精神と聡明さが救いだ。


サンダンス映画祭でグランプリを獲得。甘い所のない摂氏以下の映画。主役のジェニファー・ローレンス、注目。

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