ポール・グリーングラス監督。
イラク攻撃の原因といわれるWMD(大量破壊兵器)は、MET部隊の必死の捜索にもかかわらず見つからない。ロイ・ミラー(マット・デイモン)は国防総省の情報に不審を抱き始める。そして同じ疑念を抱いていたCIA調査官ブラウン(ブレンダン・グリーソン)と調査を始める。「グリーン・ゾーン」とは、かつて連合国暫定当局があったバクダッド市内10km²にわたる安全地帯のこと。期待通りの作品で★5つ。
マット・デイモンさまには、またまたシビレタ、目下ダントツで私のアイドル。 彼のヌーボーとした風貌は(ごめんなさい!)、アメリカ的な正義感をマイルドにし、風景にうまく溶け込み画面をドキュメンタリー風に見せる威力がある。言葉数が少なくまた反応が遅いように見えるのだが、危険な状況では本能的に速く行動する、そのギャップが見ていてたまらない。もしトム・クルーズだったら主人公が目立ちすぎ、シルベスター・スタローン(年取りすぎちゃってるけど)だったら単独行動が激しすぎ、ダニエル・グレイグ様だったら美女同伴になってしまいそうだ。この作品をいろんな意味での境界線をぎりぎりで上質に保っているのは、彼の持つ役割が大きい。
またカメラもすごい。夜のバクダッドはほとんど白黒映像、ポツポツと光る街灯や車のライトがぼんやりと闇を深緑色に染める。手持ちカメラがテンポを上げ、カットの多いカメラワークは心理的緊張感を高める。グリーングラス監督、本領発揮。 ”ボーン”シリーズのときのように誰がどうなっているかわからないけれど、デイモン様が強いことだけはわかるワ。
原作はワシントン・ポスト紙のジャーナリスト、ラジャフ・チャンドラセカランの『インペリアル・ライフ・イン・ザ・エメラルド・シティ』。アメ リカの一部の人にはには大変な反米映画に映るだろう(早々とアメリカに追随したどこかの国にとっても耳の痛い話であるはずである)。一方、アメリカ軍には正義感ある人間が動いてますよ!、CIAも頭と経験で動いてますよ!と忘れることなく描かれている。とはいっても軍は単独行動を肯定されてしまったら困ってしまうだろう。マイケル・ムーア監督は「この映画が作られたことが信じられない。愚かにもアクション映画として公開されてし まった。ハリウッドで作られたイラク戦争映画では最も まっとうである」とツィートしたそうだけど、アクション映画として公開するしかなかったかもしれない。いずれにせよ現在進行中でありながら、”アクション映画”としてでもこのような映画を作ることができる自由があることに少なからず驚いた。是非劇場へ。
0 件のコメント:
コメントを投稿