トゥルーディ(ハンネローレ・エルスナー)と夫のルディ(エルマー・ウェッパー)はドイツ山間の小さな村で平凡な毎日を送っていた。ある日、トゥルーディは夫が余命いくばくもないことを医師に告げられる。悔いの残らないように旅行でもとすすめられ、以前から行きたかった次男の住む日本を切りだすけれども、何も知らない夫は長男と長女の住むベルリンでいいと言う。
ベルリンで家族を持つ長男、ゲイで恋人と暮らす長女。突然の訪問は子どもたちには歓迎されない。そんな両親を優しくもてなしてくれたのは何の血のつながりもない長女の恋人。トゥルーディが見たがっていた舞踏ダンサーの遠藤公義(えんどう・ただし)の公演にも同行してくれる。
ベルリンで身の置き場のないルディとトゥルーディは、昔訪れたバルト海まで2人で出かける。しかしそこで待っていたのはトゥルーディの突然の死。母親の死を悲しみながらも、今後1人になる父親の扱いに困るこどもたち。
1人で住むルーディを訪ねてきてくれた長女の恋人から、2人がベルリンで見た舞踏の話を聞かされ、トゥルーディが舞踏をしたがっていたこと、それをサポートしなかったことなどを思い出す。実は妻のことを何も知らなかったのではないか、と後悔にさいなまれるルディ。そして、妻を探すためにトゥルーディが生前に行きたがっていた日本へと向かう。
「東京物語」ベルリン版ともいえる前半、素晴らしい俳優の演技もあり、洋の東西を問わない普遍的な家族の姿を垣間見ることができる。
後半、ルーディは次男を頼って東京にやってくる。いつしか、妻の洋服とネックレスを身にまといひとりで東京をさまよい始める。そして桜の咲く公園(井の頭公園だ)で舞踏ダンサーの少女(入月絢)に出会い、心を通わせるようになる。ためらいながら少女に舞踏を教えてもらおうとする。このあたり本人は全く気が付いていないのだけど、無言でスカートと女物のセーターを着込み、桜の下を歩きまわるルディの姿は、すでに「舞踏」そのもの。彼は至極真面目なのだけど、滑稽で不謹慎ながら笑ってしまう。
日本のどんな風景も丸ごと受け入れている(であろうとおもう)監督の愛情が全編にあふれる。この映画の夫が妻にそうであったように、実は日本のことを何も見ようとしていないのは私なのか?
この映画の「桜」と「富士山」は私の知らない美しさを放っている。
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