バレリーナの何を見るかというと、美しいしなやかな体形、音楽の捉え方、振付を完ぺきにものにした自信、要するにオーラまでひっくるめたダンサーの全体のバランス。顔は美しいに越したことはないけれど、映画やTVに比べその役割は低く、おそらく腕や脚や胴と同列であろう。バレリーナは”白鳥の湖”のようなクラシックバレエの場合、決められた”パ”を高度に完成させ、その正確さ抜きでは感情は表現できない。
ナタリー・ポートマンはバレリーナとしてではなく、俳優として「顔」と「声」を表現手段に、心の動きを完璧に表現している。とはいえ、かなり努力をしたのだろう、バレリーナのように引き締まった体は役者魂を感じる。メトの本当のプリンシパルと比べると勿論動きは違うのだが(ボディダブルのシーンは別)、それが映画の流れに違和感を感じさせることはない。肉体の動きを上手に使いながら、焦点を心の中に当てた演出が光る。
母親役のバーバラ・ハーシーのいいようのない威圧感。切れそうで切れないところがコワイ。母娘であれば大なり小なり感じたことがあるような何気ない確執。この2人の関係は、「キャリー」を思い起こさせる。
どこからが現実でどこからが夢か、その境目がわからない。人間が崩れていくという不自然な姿と、肉体が変調をきたしていくシーンではクローネンバーグの映画を思い起こさせる。鳥が大嫌いなオット、ゲージツとは別の意味で鳥肌が立ったと騒いでいた・・・。
主人公ニナの気になる同僚ダンサー、リリー役ミラ・クルスは”That '70s Show ”のジャッキーからグググっと格をあげた。古株のプリマドンナ役ウィノナ・ライダーはぜんぜんプリンシパルに見えないのだけれど、ニナを怖がらせるのには十分な迫力。R15指定なので、バレエを習っている小中学生と見に行っても劇場に入れてもらえないので注意してね。
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