もと劇団四季にいらした私の踊りの先生がプロデュースした「藤十郎 鳳楽の会」を観て来た。
二代目澤村藤十郎は十数年前に脳梗塞を発症されリハビリを続けられているところだ。自作の台本「雪女」を朗読、女形特有の美しくて芯のある声の響きが素晴らしかった。「紀伊国屋!」の掛け声、みなさん歌舞伎への復帰を心待ちにしているのだ。
三遊亭鳳楽師匠は「鰍沢」(かじかざわ)。長講で昨今は演じる落語家がほとんどいないという。女の人の妖気、色気、狂気の変化、クライマックスの雪の中の大スペクタクルはまるで映画でも見るよう。
記憶に自信が無いけれど、大体のあらすじを書いてみる。テケテンテン・・・・・
身延山の参詣の帰り、旅人が雪の山中で道に迷う。ようやく見つけた山小屋に助けを求めると、そこにはボロボロの継ぎはぎだらけの着物を着た女。なかなか美しい顔立ちだけど、耳から首にかけてある大きな切り傷が痛々しい。旅人はどこかでみた顔なので尋ねてみると、昔吉原で初会惚れした花魁だったことが分かる。二度目に会いに行ったときは心中してもういなかった。
心中を試みたものの命が助かった花魁、名を月の輪のお熊。お熊と亭主はどうにか逃げおおせ、人里離れた山の中で熊撃ちを生業に細々と生きている。「どうか内緒にしてください」とシンミリと頼まれ、かわいそうに思った旅人は、宿賃として小判の束から2枚ほどお熊に渡す。「そんな、困ります」という女。「何もないけれど、寒いから」と卵酒を進められ、それを飲んだ旅人は疲れもあって眠くなる。旅人が寝ている間、酒を買いに外出するお熊。
その留守中、亭主が「寒い寒い」と返ってくる。卵酒の残りをみつけ、「ちょうどいい」と飲み干してしまう。そうこうするうちに気分が悪くなり、苦しんでいるところにお熊が帰ってくる。驚くお熊。旅人に毒入りの酒を飲ませて、金を奪い取る算段だったと亭主に告げる。
それを隣の部屋で聞いていた旅人、毒がまわりふらふらだけど、たまたま持ち合わせていた身延山の毒消をどうにか飲み込み吹雪の中へ逃げ出す。 「亭主がこうなったのもあの旅人のせい、カタキを打ってやるわ」とすごい言いがかりをつけて、お熊は鉄砲を持って追いかける。旅人はついに鰍沢の断崖に追い詰められる。もはやこれまでと思ったとき、ザザザ~と雪崩が起こり、ダダダ~っと転げ落ちた先が、なんと運よく川につないであった筏。
筏は旅人の重みで岸を離れ、ゴーゴーと急流を流れる。それを見ながら岸をはしって旅人を追いかける女。いかだはあっちにぶつかりこっちにぶつかり、どんどん材木が外れていく。最後の材木に掴まりお題目を必死に唱える旅人「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」。お熊は狙いを定め、バ~ンと鉄砲を撃つ。弾は旅人の髷をかすめ、近くの岩にた当り跳ね返る。 旅人、「お材木(お題目)で助かった!」
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