2009年11月9日月曜日

水銀体温計

会社の同僚のドイツ人はとっても心配性。今朝も眉間に皺を寄せて出社。何でも水銀体温計を壊してしまったらしい。ターミネーターのワルモノよろしく、ころころ転がる水銀の玉を掃除機で吸ったりして全部片付けたつもりだった。しかし、一晩明けて、部屋の隅っこに朝日に輝く直径0.2mmくらいの(要するにほとんど見えないほどの)玉を見つけ、なにやら不安になってしまったようなのである。

実は私、子供の頃水銀体温計を噛んで壊してしまったことがある。かなり小さかったけれど、母親の激しい動揺と、水銀の玉がころころ転がっていく様子、口に広がる変なにおいを今でもはっきり覚えている。でもまだ元気で生きている。安心させようとしてそれを話してみたが、ぜんぜん眉間の皺が消えない。かえって怖がらせてしまったようだ。あわてて「・・・、だから私、水銀のせいでちょっとヘンなのかも知れませんけどね。」と、言ってみたけど、ぜんぜん笑ってくれない。

しょうがないからウィキペディアを一緒に読む。
”体温計に使用される水銀は液体のまま経口摂取しても、そのまま排泄されるから無害である。”
ほらね、大丈夫なんですよ、と言おうとしたその先に、 
”破損した水銀体温計からこぼれ出た水銀をそのままにしておくと、徐々に水銀が気化し、肺を通じて人体に取り込まれ、主に腎臓や神経に悪影響を及ぼす(水銀中毒)。”と書いてある。
一瞬緩んだ眉間の皺はまたもや元に戻り、すっかりマリアナ海溝。

「神経に悪影響、あ、だから水銀吸っちゃって、そんなに神経質なんですよ!」
・・・冗談通じず。
「刺身を食べても水銀がたまるって言うから、そのくらいの水銀、大丈夫ですよ。」
・・・ますます墓穴。
しばらくそっとしておくことにした。

そして、その日の夕方、すっかり明るい顔をしている。どうやらかかりつけのお医者さんに電話して、一笑に付されてしまったらしい。なんだ、私もヘンに慰めようとしないで、笑い飛ばせばよかったのだ・・・。昔は各家庭に一本はあった水銀体温計、今は電子体温計に。正しく廃棄処理されているのだろうか。考えてみると、そっちのほうがコワイ。

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