イーノックは交通事故で両親をなくし叔母の家に身を寄せているが、両親の死を受け入れられず叔母とも折り合いが悪く学校へも行っていない。自らも交通事故で臨死体験をし、それ以後彼にのみ見えるようになった第二次世界大戦で特攻隊員だったヒロシが唯一の友達だ。他人の葬式に参列することが日課で、そこで出会った少女アナベルと会話を交わすようになる。アナベルは末期がん患者で余命3ヶ月と言われ、嫌なら友達でいる必要は無いと言う。死に取り付かれているイーノックは「待ってました」とばかり「それに関しては詳しいので色々と助けてあげられる」、とまるでカウンセラーのように言う。しかし、ふたりの楽しい時間は、少しづつ彼女に対しての思いを深くしていく。
まずオープニングで流れるビートルズの”Two of us”、これがいい。音楽とともに静かな郊外の町が広がる。あ、これアメリカの話だったのか、と思うようなヨーロッパの雰囲気が漂う。木漏れ陽の間に、家の廊下に、病院のベットにと、あちこちに憂いが漂い、何かを諦めたような淡い光に包まれた風景だ。
イーノックはデニス・ホッパーの息子ヘンリー・ホッパー。当たり前だけど、似てる~。目元涼しげな好青年ヨ。アナベルはミア・ワシコウスカ(アリス・ワンダーランド)、短く切った髪とお洋服がジーン・セバーグのようでとっても素敵。ヒロシ役の加瀬亮は物静かで穏やかな雰囲気がとてもいい。こういう特攻隊員が沢山いたに違いないし、彼の残した手紙の内容も自然。映画に描かれる特攻隊員は日本でもアメリカでもステレオタイプがあったけれど、新しい描き方をしてくれた若い世代の脚本(ジェンソン・リュウ)には力みや気負いを感じない。
ストーリーやテーマにとらわれると単なるメロドラマで終わってしまう。でも一つ一つのその瞬間を切り取ると「若いってこういうことだったのかな」と、なんとも切ない気持ちにさせられる儚い映画。
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