家城巳代治監督、新藤兼人脚本の「姉妹」(1955)を見た。発電所がある山間の村に住む姉妹の物語。姉妹は、発電所で働く父、優しい母、小さな弟3人との7人暮らし。父親は発電所で働いていて人格者。母は良妻賢母。姉の圭子(野添ひとみ:美しい!)はクリスチャンで物静かな性格、妹の俊子(中原ひとみ:可憐!)は天真爛漫で物怖じしない性格。
発電所には人員整理の波、従業員の事故死、近くの農家からは食うに困った母親が北海道に移住する旅費のため娘を買って欲しいと頼みに来たり。父は亡くなったり首切りにあった従業員の家族の手前、俊子に修学旅行をあきらめるように言う、また俊子が買ってもらうはずだった靴のお金を農家の人に渡してしまったり。そのつど理由を丁寧に説明し、理解を求める父は、「他人は他人だといわれればそれまでだけど、それが自分の生き方だ」という。
買ってもらえなかった靴や参加できなかった修学旅行に対する不満よりも、一生懸命生きている人たちが不幸になる、という世の中の不条理に疑問を持つ俊子。俊子は姉の圭子に「いい人や真面目な人が報われないのはなぜ?」と尋ねる。圭子は「神が与えた試練なのよ」と答える。しかし淑子は言う、「政治の失敗よ」。
しかしけして暗いだけの映画ではない。村人たちは苦しい生活の中に小さな喜びを見つけて生きている。それは故郷から送られてきたスルメイカだったり、赤ん坊の顔を見ながらの野良仕事だったり。ささやかで何とも切なくなるけれど、本当の幸せというのはこんなものなのだと思ったりもする。
そして、今盛んにリストラが叫ばれている電力会社、その60年前の姿を見て複雑な重いがする。
去年から続いている山田洋次監督の選んだ100本の映画、どれも本当に面白い。
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