ウィーン美術館所蔵、「十字架を担うキリスト」。ブリューゲルが彼の生きた16世紀フランドル地方の風景の中に「キリストの受難」を描いた作品である。
キリストが十字架を背負って処刑場に進む、その闇の隣では何事もないように子供たちがはしゃぎ、大人は踊り、世界は柔らかな光に包まれている。権力者が既得権を守りたいがための蛮行は、キリストの受難から1500年以上経たフランドルの地でも懲りることなく繰り返されている。そんな絵画にジュリアン・シュナーベル監督が時間、空間、音を加えて映像に収め、人間は現代もやはり変わっていないのだと気づかされる。
その光と闇の境界線に位置するものはなんなのだろう。そして、光には何が必要なのだろう。寛容、許容、慈悲、畏敬・・・。重たい時の流れのごとく回る風車の音が、グワーン、グワーンと画面全体に響く。一枚の絵の中には、ブリューゲルの壮大な時間と人々への思いが詰めこまれている。
主演はあのブレードランナーのルドガー・ハウアー、シワが増えたけれど面影あり。そして70年代一世を風靡した懐かしのマイケル・ヨークと、今も美しいシャーロット・ランプリング。この3人がまさに絵画そのものの風格をもって、ブリューゲルの世界に違和感なく溶け込んでいる。
シュナーベル監督では「バスキア」でもデヴィット・ボウイ、デニス・ホッパー、ゲイリー・オールドマン、クリストファー・ウォーケン等、ファン垂涎の役者をチェスのコマのようにスッスと配置したけれど、今回もその配役に唸ってしまった。
ブリューゲルはとても惹かれます。
返信削除絵の中に様々な意味が込められているんですね。
『雪の中の狩人』好きです。
『ベツレヘムの嬰児虐殺』は嬰児は
どこにも描かれていないけれどそれゆえに
怖さが重く響くようです。
配役の3人いいですね。
マイケル・ヨークは私にとっては
『ロミオとジュリエット』のイメージのままですが
どんな風に変貌を遂げているのか見てみたいです。
シャーロットはすてきな女優さんですね。大好きです。
芸術家がなぜ偉大なのか、なぜ時間や海を越えてその作品に人々が惹かれるのかよくわかるような気がします。普遍的な何かをしっかりと掴んでいるんですね。
返信削除Angela さん。先日はありがとうございました。
返信削除とっても嬉しかったです。
そう言えば、おわかりいただけるかと。^^
ああ、これ!わたしも見たかったです。
すごいですね。こんなに見事にブリューゲルの世界を再現するなんて。
シャーロット・ランプリングも好きだし、これは見たいなあ。
ケメックスにも興味ありまして。^^
美味しいコーヒー、待ってます!
彼岸花さん、いらっしゃいませ!!
削除いえいえ、口を挟んでしまうのには気が引けたのですが、お邪魔にならなかったのであればよかったです、ほっ。最近は家庭での電力料金値上げ、再稼働等、聞捨てならないニュースが増え、なんだかモヤモヤしています。
「ブリューゲル・・・」は自分が鞭打たれているような「痛い」場面もありますが、おおらかな自然・人間讃歌ですね。芸術家の慧眼に今更なからに驚かされました。
ケメックスは毎晩練習しています。あとはコーヒーミルをどうしようかな、と。