2011年2月20日日曜日

ヒア・アフター HEREAFTER

クリント・イーストウッド監督、スティーヴン・スピルバーグ製作。

<パリ>ジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、恋人と東南アジアでのバカンス中津波に襲われ、九死に一 生を得る。その時見た不思議な光景(ビジョン)いわゆる臨死体験が頭から離れず、周りの人間が誰も理解を示さない中、それが何であるかつきとめようとする。
<サンフランシスコ>ジョージ(マット・デイモン)は人に触れると、その人が会いたい死者の声が聞こえる。兄はジョージの霊能力を「才能」と言うが本人には「呪い」としか思えない。霊能者としての過去を伏せ、工場で静かに働いている。
<ロンドン>保護観察中の母子家庭で、お互いに助け合いながら暮らす双子の少年ジェイソンとマーカス。ある日交通事故で兄ジェイ ソンがこの世を去ってしまう。母はもともと薬物中毒で、事故のショックも伴い治療の施設に入所することになり、1人残されたマーカスは里親にあづけられることになる。子どもには過酷すぎる孤独の中、兄と話したい一心で霊能者を訪ね歩く。
その3人が何かに引き寄せられるようにロンドンで出会い・・・。
 
クリント・イーストウッドの題材としては「?」だったけど、スピルバーグ制作と聞いて、なある・・・。”スピルバーグのスピリチュアルもの”かと、見る前は少々懐疑的だった。でも心配は無用、スピルバーグが本当は作りたくっても作れなかったものを、イーストウッドがさらりと作り上げたといった感じ。「死者と話ができるのに、死者がどこへ行くのかわからない」、あくまでも謙虚だ。いつものことだけど彼の映画は、あまりゴタクを並べずに、自分の視点で静かに見るのがいい。

イーストウッドの映画が本当にすごいと思うのは、初めの数秒で登場人物のすべてを映し出すところだ。映画は接点のない3人のストーリーがオムニバスのように進むので、それぞれが出会う事件まで長い時間は割いていない。しかし、双子が冒頭に写真撮影をしているシーンだけで、私たちはすぐさま兄弟の絆を見てとり、マーカスと兄を亡くす痛みを共有する。津波にながされるマリーの瞳は、私たちをマリーのビジョンに引き込む。彼女になぜ変化がおきたのか、それはそれは激しい津波のシーンで十分納得できる。顔がミニマムにしか動かないマット・デイモン(やっぱり好きだわ~♡)が1人で食事をしているだけで、その果てしなく広がる孤独感がひしひしと伝わってくる。彼らがなぜ「ヒア・アフター」を追い求め、または払いのけようとするのかが、短い時間で十分に理解できるのだ。

「死後の世界」がどうとかではなく、「死」があるからこそ人間は生きる意味を必死で考える。生きている人であれ、死者であれ、誰の声を聞くかは自分次第。その今ここにある「生」を描いている映画、だと思う。ラフマニノフが一緒になって泣かせてくれる、ホント・・・。
セシル・ド・フランス。オットはマットデイモンがうらやましいって

8 件のコメント:

  1. セシル・ド・フランスは素敵な女優さんですね。
    「スパニッシュ・アパートメント」で初めて見ましたが
    この映画で一番印象的でした。ご主人もお好きなんですね! いつの間にかハリウッドに進出していたんですね。
    マット・デイモンはアクターズスタジオのインタビュー番組を見た時人間的に信頼できそうな人という印象を受けました。
    「ボーン・アイデンティティー」シリーズはとても惹きこまれました。デビュー作も良かったですね。

    「ヒア・アフター」ぜひ観てみたいです♪
    クリント・イーストウッドって才能の引き出しをたくさん持っていますね。まだまだ映画撮るらしいですね。楽しみです。

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  2. Toshi2011年2月23日 14:35

    こんにちは、私も日曜日に見てきました。良かったです。イーストウッドは、あと40本は撮るつもりだそうですね。あと40回は(繰り返してみればもっと増えますが)幸福な気持ちを味わえるということで、喜んでいます。

    いつもながら、素敵なレビューですね。私の方はぐしゃぐしゃになりそうです。勝手にAngelaさんのレビューを紹介してしまいました…お許しというのも編なので、何卒よろしくお願いします~♪

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  3. セシル・ド・フランスってきれいですね。
    ハリウッドもほっとかなかったんですね♪
    「スパニッシュ・アパートメント」ではとても
    輝いていて一番印象に残っています。

    Angelaさんのレヴューも素晴らしいので
    新聞の映画の解説より上手いなといつも思います。

    ぜひぜひ観に行ってみたい〜〜〜。

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  4. エリリンさんはホントにたくさんご覧になってますね~!セシル・ド・フランスは初めて知りました。ベルギー人ですが、まさに”ザ・フランス女優”という雰囲気の人ですね。いいです。
    「ヒア・アフター」ではアメリカ映画なのに(と言っては語弊があるかもしれませんが)ヨーロッパ女性がこんなに美しくしっかりと描かれているのにも感心します。

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  5. Toshiさん、

    なぜかコメントがスパムに入っていました。気付くのが遅くなってごめんなさい!

    実はひとつひとつのシーンをコマ送りにして、あーだこーだと言いたいことがいっぱいなんです。あの静けさは逆に雄弁過ぎて、次から次へといろいろなことが頭に浮かんできます。

    これから40作見られるんですね。うれしいなぁ・・・。

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  6. エリリンさん、

    一つ目のコメントがなぜかスパム扱いになっていて、気がつくのが遅れました。ごめんなさい! 

    ボーンシリーズは、なんと1と2は映画館で見ていないのです。どうも当時は興味が無かったらしい。まずオットがケーブルTVで見て「これは面白い!」となり、DVDを取り寄せて一家で観賞し、家族ですっかりハマりました。

    マット・デイモン、いいです、かなり好みです♡。ちょっと変わったところでは「ドグマ」(99年)、ご覧になりましたか?かなり毒がありますが、彼らの(ベン・アフレックも出てます)知的な部分を感じます。

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  7. いえいえどういたしまして。
    私が送信を押し忘れたのかと思ってもう一度コメントしちゃいました♪

    ボーンシリーズのマリー役の女優さんもいい感じでしたね。「ラン・ローラ・ラン」という面白い映画に出ていた人(だったかな...)

    「ドグマ」は観ていないんです。Angelaさんのオススメならぜひ観てみたいです。
    ベン・アフレックとは知的最強コンビなんですね♪
    ベンの弟も可愛くて好きです。

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  8. ドイツ人のフランカ・ポテンテ(「ラン・ローラ・ラン」)ですね。きれいな人です。ボーン第2作ではアットいうまに死んじゃいましたね。
    「ドグマ」はもう10年も前に見たので、細かいところはあまり覚えていませんのです。お勧めというより、変な映画です。でも「グッドウィルハンティング」や「リプリー」のあとだったので、なかなか面白い路線だなと思った次第です。

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