2010年12月13日月曜日

ハーブ アンド ドロシー

ハーブ・ヴォーゲル(88歳)、元郵便局員。ドロシー・ヴォーゲル(75歳)は元図書館員。この地味で小柄なカップルは、小さなNYのアパートでドロシーの給料で生活し、ハーブの給料でアートを買い続け、積もり積もったコレクションはなんと4000点以上。さすがにコレクションと亀と魚の水槽で部屋ががパンパンになり、ナショナルギャラリーに寄贈を決めた。アパートも小さいのでせいぜいトラック一台くらい出運べると思いきや、なんとトラックしかも大型5台の作品量。



映画は1960年、2人がダンスホールで出会った時から話が始まる。アートが大好きなハーブの影響を受け2人は趣味で絵を描き始めるが、そのうちミニマルアートの収集を始める。「自分が好きな作品であること」「アパートに入ること」「地下鉄かタクシーで持って帰れること」が条件。そしてハーブは「誰もしたことがない新しい作品が好きだ」とも言っている。新進のアーティストの考え方作風をじっくり観察し、彼らにに好かれ、低予算で購入。やがてその作家は世に出、その作品の価格は上がるのであるが、夫婦は生活のために一つたりとも売却しなかったそうだ。

全く抽象的なオブジェを見て(予告編に登場)、「置いてある角度が違う」と言って オブジェを置きなおしてもらい、「この角度の方がずっといい!」と満足するハーブ。私には解けた鉄が適当にくっついているようにしか見えないのだ。しかし彼ら自身もなぜ作品が好きなのか明確な答えを持っていない。生まれながらに”見る目”を備えているのだ、と人は言う。

郵便局でハーブは夜勤で手紙の仕訳をしていた。「どうもアートの話ができるような職場ではなかった。」 と言う。それはそうでしょう、とふつうに思うのだけれど、自分が特別であるとか、職場を卑下しているのではなく、アートがあたかもバスケットボールかベースボールのように聞えるような言い方なのだ。

監督の佐々木芽生(めぐみ)さん(48)はニューヨーク在住。彼女自身も製作費を工面して4年をかけて作品を完成している。映画はNYのめまぐるしいアートシーンとヴォーゲル夫妻の情熱を、静かな日本家屋で聞く昔話のように映しだす。あるアーティストが映画の中で言った。「ヴォーゲルさんの家の亀になって、作品を見ていたいわ。」と。・・・亀の方が私よりミニマルアートにくわしいかもしれないなぁ・・。

2 件のコメント:

  1. ボーゲル夫妻初めて知りました。
    素敵なご夫婦ですね!!

    こんな風に暮らして
    芸術作品を集めている人を初めて知りました。
    映画見てみたいです。

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  2. エリリンさん、
    大変かわいいご夫婦で、お二人を見ているだけで和みます。アーティストの方に好かれるのも合点がいきます。通常ギャラリー経由うで作品は売買されますが、絶対転売をしないとわかっているので、彼らは直接作家から作品を購入できます。もちろん人柄だけで作品を売ってもらえるとは思いませんが。
    渋谷のシアターイメージフォーラムで見ました。神奈川は25日から横浜のシネマジャック&ベティで上映されます。是非!

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