スティーブン・ソダーバーグ監督。
この監督は好きだ。20代で「セックスと嘘とビデオテープ」でカンヌのパルムドール賞を取ったときは、彼を推した審査委員長のヴィム・ベンダース監督までぶつぶついわれちゃったけど、あれから20年、その賞に恥ずかしくない作品を取り続けているのは周知の事実。
主人公のマーク・ウィテカー(マット・デイモン)、次から次へと嘘をつき、頭には関連性なくいろいろな話題が浮かんでくる。「双極性障害」という病気カから来る症状で、冷静に観察すればアノ人おかしい、とわかるのだけれど、周りもまあ、ジコチューのいい加減な人ばかり。嘘が嘘を呼び、たまに出てくる真実がFBI喜ぶ”大悪事”なもので、誰も彼のビョーキに気づくことなく、全てが雪だるま式に大きくなっていく。
彼の告発が護身のためか名誉欲のためか正義のためか、そのあたりは見ていてまったくはっきりしない。おそらくそのどれでもないのだろう。しかし、マット・デイモンは彼をただの病気の人で終わらせず、見る者にこんな人どこかにいるなぁと思わせつつ、実に薄っぺらくしかもコミカルに演じ、カンペキにものにしている。あのボーン様の体型を惜しげもなく捨て去り、着ぐるみ着せたように脂肪をまとい、顔はあのままだけれども(こればっかりはしょうがない)、見た目もすっかりマーク・ウィテカー(実物がどんな顔してるか知らないけれど)。次回はクリント・イーストウッド監督の作品に登場、楽しみだ。
出演している全ての役者、音楽、その完璧なバランスに、古い時代のハリウッド映画を感じながら、「味の素」なんていう聞きなれた社名を小耳にはさみつつ、現代の「から騒ぎ」を堪能できる。彼だけがビョーキじゃなくって、取り巻く社会もかなりいっちゃってる。
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