ダニー・ボイル監督、前作「
サンシャイン2057」の無機質な空中の世界から180度、とびっきりオーガニック(?)な地上の世界へ。まことにストライクゾーンが広い。脚本は「フルモンティ」のサイモン・ビーフォイ。
これが生のインドの姿とすれば(そうらしいのであるが)、まさに悲惨。見るも無残な境遇の中を、人間の本能 -生命力であったり、善の心であったり、人を好きになる心であったり- その全てをありったけ絞りだしながら、子供たちは駆け抜けていく。あっけらかんとしたはちきれんばかりのエネルギーは、まるで重い現実という壊れかけた車に注がれるハイオクガソリン、私たちをのせてガタガタ道をぐいぐいと走っていく。そんな引力をもった映画だ。
過酷な運命との戦いは人生の教科書、クイズと回答が書かれた紙を読むミリオネア司会者(コイけどみのもんたには負ける)の想像も及ばない世界。”ファイナル・アンサー”、世界中でこれほど人生が詰まった正解はどれほどあるのだろう。シンデレラのようなファンタジー映画、こんなことはないとはわかっていながらも、机上の勉強で頭でっかちな子供ばかりの”どこかの国”っていったいなんなのよ、と思わず思ってしまう。
主人公ジャマールを演じるデーヴ・パテルはお上品(過ぎちゃったかな?)。なーる、ロンドン生まれで既にイギリスのTVで活躍している。ラティカのフリーダ・ピントはソフトなタイプのインド美人(過ぎちゃったかな?)、ウディ・アレン作品に出演が決定している。絵にかいたような美しい若者に成長するのもフィクションの世界、つらい子供時代が美しく変わってゆく非現実の世界は映画ならでは。しかし、うXちまみれになりながらもその過酷な運命を演じたジャマールと兄のサリームの幼少、少年期を演じた子役たちがデーヴやフリーダと同じくらい、それ以上の立役者と言えるかも。
エンディングはいいですよ。たけしの座頭一みたい。ウフフ、見てのお楽しみ。