2009年3月9日月曜日

日本の熱い日々 謀殺・下山事件

監督:熊井啓、1981年。
1949年に連合国による占領統治下の日本で起きた下山定則国鉄総裁の変死事件を、朝日新聞の矢田喜美雄記者が追いかけて書いた『謀殺・下山事件』(1973年)が原作。

ところどころに挿入される実際のニュースフィルムと同じ色調のモノクロ画面。実際の出来事と矢田記者の主張、ニュース画面と映画の推理場面の境目がぼやけ、やがて見ている私の中で矢田記者の推理が現実味を帯びてくる。まるで恐怖が得体のしれない大きな黒い影となって忍び寄ってくるようだ。三丁目の夕日を浴びながら明るくたくましく生きていた日本もあれば、大きなうねりに飲み込まれてしまった日本もあった。現代のジャーナリズムというものは、こうして何かに飲み込まれてしまったのではないのだろうか。また、貧困がすべての国民の自由を尊厳を幸せを蝕んでいく様が、そして人の思想に対する埋められない溝が、ありありと見て取れる。結果、世界第2の経済大国になったとはいえ、日本の本質・根本を考え直さずにはいられない映画である。

俳優がすばらしい。仲代達也さんは言わずもがなであるが、労働者丸山役の隆大介さん、なぞの人物唐沢役の大滝秀治さんは特に印象に残る。

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