当然ではありますが、私にはお構い無しにどんどん周りは変化していく。今はもうない喫茶店のお話。東横線の線路づたいに自由が丘駅から5分ほど歩いたところに”レノン”という喫茶店があった。平屋建てで道路に面したところから2,3段階段を上がると、レノンのめがね模様のついた扉があった、ように記憶している。
大人っていつからをさすのだろう。大人になったら絶対入りたいと思っていた。そこは私にとってはいつまでもおとなのバリアが張られた場所だった。はじめて入ったのは18の時、母の同僚で私より10歳程年上のお姉さまが連れて行ってくれた。彼女はスカッシュのコーチをしていて、朝が弱いのか宵っ張りなのか仕事は遅番専門。家が日暮里だったので仕事が終わってから、自由が丘あたりで飲んだ時はよくうちに泊まりに来た。のんびりとした面白い人で、ヘビースモーカーで、いつもぽわーんと11時ごろ起きてきた。
その日もうちに泊まってのんびり起きてきて、出勤前のコーヒーに私がついていったのだったと思う。いつも想像の世界だったレノンの店内は、思っていた通り大人の世界だったような気がする。タバコの煙が窓から入る陽ざしの中を白く燻っていた。なにを注文したのか覚えていない、なにを話したのかも。そこに入ることができたという、くすぐったいうれししさだけが思い出される。もちろんビートルズがかかっていたに違いない。でもそれも覚えていない。
そのお姉さまは2年前、運転中に突然脳溢血で他界してしまった。彼女のきれいな眉とあのふわっとしたユーモアが本当に懐かしく思い出される。その壊れてしまった脳の片隅に、私と一緒に座っていたレノンでの記憶は残っていたのかしら・・・。
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