2013年4月10日水曜日

映画ひとこと 3月

2月頭から続いていた咳が治まり始めた3月、桜の便りとともに鼻水とくしゃみに襲われる。せっかく治った咳がまたぶり返してしまった(;_;)。この時期は大晦日@アメ横のような賑わいの耳鼻咽喉科に駆け込む。

お医者さん曰く、鼻カメラでモニターに映った映像を見ながら「典型的なアレルギー症状です。」 とっても忙しいお医者さんは「なんの薬がいいですか?」と患者に聞いてくる。お医者さんと問答する暇もなく、これまた忙しそうな看護婦さんに吸入器の前にとっとと追っ払われてしまった。
お薬は”アレグラ”、眠たくならず、喉も乾かず、ゆっくりと効き目が現れ、鼻水も咳も緩やかに治まる。
3月もあまり体調が優れず血が飛び散るような映画を見る気がしない。というわけで、残念ながら「ジャンゴ」はパスしてしまった。

SAVAGES

オリバーストーン監督。残酷そうなのでオットが予約を入れたとき、上記の理由で気乗りがしなかった。はたして、血も飛び散るし痛そうなシーンが満載だけど、見てよかったのだ、これが! まず、映像がとても美しい。ストーリーがうまく組み立てられていて、過激なシーンもそれほど気にならない。3人の若者は綺麗だし演技も上手だが、なんといってもベニチオ・デル・トロ、サルマ・ハエック、ジョン・トラボルタが強烈すぎて、主役であるはずの若者たちが霞んでしまう。ベテラン3人は完全に役を楽しんでいるようだ。こういうエンディング、トワイライトの最終章でもそうだったけど、流行りなのかな?

クラウド・アトラス

19世紀から文明が崩壊してしまった未来社会までの6つの時代のストーリーが並行して進んでいく。13人の役者が時には特殊メイクを施して、多い人でひとり6役程をこなす。バラバラに進んで行くストーリーがとてもうまくモザイクのように組み合わさり、時代を超えたモラル、というより大きな宗教的な思考に辿りつく。「袖触合うも他生の縁」という考え方が西洋にもあるのか、と思っていたら原作者のディヴィット・ミッチェルは少なからず日本と縁がある。172分、長く感じない。

マスター

ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、は本当にコイ、しかし本当に凄い役者だ。顔だけでなく頭の先からつま先まで全てを自由自在に使って演じている。「生きる」とか「信じる」とかが「何である」というよりも「簡単には説明できない」、ということが淡々と描かれている。人間の根底でのつながりは理屈がつけられない、そんな人間関係に嫉妬する妻を演じたエイミー・アダムスもとてもよかった。音楽、映像ともに、何か普遍的なものを感じさせる素晴らしい一篇。

キング・オブ・マンハッタン

原題は「Arbitrage」、邦題は苦肉の策なのだろう。上流階級の人間がスラム街に住む若者に運命を託さざるを得ない、という展開が皮肉。妻は夫の稼ぎをせっせとチャリティーにつぎ込む、金持ちが嫌いな刑事はスラム街の若者を悪気も無く利用する。主人公のような人間ははっきり言って嫌いなタイプだけれど、刑事も意地悪だし、役者対決でティム・ロス(刑事)vsリチャード・ギア(金持ち主人公)だとだんだん主人公に肩入れしたくなってくる。

アンナ・カレーニナ

貴族の虚栄社会を舞台に見立てた素晴らしい演出。アンナは舞台を離れ野外にも出る。なすすべもなく朽ち果てていくだけではないところが今までの解釈と少々違う。しかし、心は自由になったのに、最後まで舞台から降りることができなかったアンナ、一方舞台から降りて夫に付いていくキティ。この対照的な姿は、トルストイの思想を大変わかりやすく映し出し、大変賢い演出だ。
また映画ならではの繊細な表情、手の動きまでを捉えたカメラワークで役者の個性が際立つ。キーラ・ナイトレイが輝くような美しさ。我が家の男衆絶賛。ジュード・ロウは完全に年配の役、自分の持つ色気を抑えるのも役者の仕事、最後の草原に身を置く姿が美しく、普通抱くアンナの夫のイメージと少々違う。あらすじがわかっているだけに、そのあわれな「アンナ・カレーニナ」を見るのは気が進まなかったが、こんな素晴らしい「戯曲」が見られるとは思っても見なかった。もう一度見たい。

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