2013年10月25日金曜日

アムステルダム 市立近代美術館

今年の夏休みはベネルクス・ジャーマンパスで電車の旅。
頭で寝かせた思い出、忘れないうちに綴ってみる。

ロンドンからユーロスターでドーバー海峡を渡り、ブリュッセルを半日観光してブルージュに泊り、アムステルダムに。中心部は徒歩と路面電車で観光が楽しめる。滞在した2泊3日は電車と博物館がセットになった48時間チケットを購入、フルに使って夏の終わりのアムステルダムを満喫した。

まずは、「アムステルダム市立近代美術館」。
19世紀終わりに建てられた16世紀オランダルネサンス様式のヴァイスマン・ビル(左/レンガ作りの建物)と、2012年に改修を終えたベンサム・クロウェル・ウイング(右/白の建物)という全く異なる2つの建造物からなっている。

(写真:John Lewis Marshall)
新ウイングはご覧のとおりで「バスタブ」と呼ばれており、デザインには賛否両論あったようだ。私は一目で気に入ってしまったのだが。1階部分はガラス張りでエントランスとカフェ。ガラス効果で”バスタブ”が宙に浮いているように見える。

近代的な正面玄関から少し行くと、真っ白な壁に挟まれた荘厳な階段(写真下)が表れる。す、好きだこの階段。で、「なんか入口と雰囲気が違うな~」と・・・。しばらくして隣の曾おじいさん建物(左)とひ孫建物(右)とは繋がっていたことに気づく(予習していなかったからね)。エクステリアの新旧コントラストから見ると、インテリアの統一感は絶妙だ。

ヴァイスマン・ビルは今まで行われてきた改築や増床でその姿を変えてしまっていたが、今回の改修で当初のネオ・ルネッサンスのデザインがよみがえったそうだ。
細部まで心の行き届いた内装、そこに照明と自然光が実に巧みに使われている。大きな窓には半透明のスクリーン、外の風景が絵画のようだ。ああ、このセンスの良さ!

実に贅沢な階段

階段の上
窓の向こうには伝統的な建物

































そんな完璧な空間に選び抜かれた近代絵画、工芸がゆったりと整然と展示されている。空気を吸うように作品を体に取り込むことができる。まさに天国。住み込みさせていただきたい・・・

ゆったりとした空間
人が入ると天井の高さがわかる
美術館を出て、上を見上げると午後8時とは言えまだ明るい。”バスタブ”の向かい側にある壁に目をやると、目をおっきく開けたおじさんの顔、壁の上の青空に浮かぶ白い雲を背景に、一匹の黒い鳥。鑑賞の余韻が楽しめる素敵な空間だ




2013年10月22日火曜日

我が家の高校生 その3

満月の夜でもないのに、家の近所に「狸」が表れたとご近所さん。目がキラリンと光る写真を見ると、確かに犬でも猫でもない。山もないのにいったいどこから現れたのか。
さっそくワカに教えた。
すると、「ぼくはね、ヒ・ラ・イ・シ・ンを見たんだよ!」と言う。
ちゃんと人の話を聞いていたのだろうか?無機物の話題に振られても、こっちは有機物の話しをしているのだよ。
「電線の上を歩いていたんだよね~」

ああ、それはハ・ク・ビ・シ・ン

2013年10月15日火曜日

The Company You Keep  ランナウェイ/逃亡者

ロバート・レッドフォード監督・主演。「明日に向かって打て」が私の中のRR。御年77歳と聞くと、なんとなし寂しさが漂ってくるけれど、御本人は意欲的だ。

1960年代アメリカで大きなうねりとなったベトナム反戦運動は、やがて一部の学生が過激化し、その過激派グループ「ウェザーマン」は連続爆破や銀行強盗殺人を起こす。そのかどでFBIに追われ、メンバーは散り散りになり、本名を隠しふつうの生活に身を潜める。それから30年、メンバーの1人シャロン(スーザン・サランドン)は逃げることに疲れ、自首のような形で逮捕される。一方、斜陽の新聞会社ではシャロンの逮捕の記事を指さし、これがスクープだ!と編集長が若い新聞記者ベン・シェパード(シャイア・ラブーフ)のお尻を叩く。へらへらと乗り気ではなかったベンは、取材を続けるうちに優秀な弁護士ジム(ロバート・レッドフォード)に出会うがほどなくジムは逃亡し、今度は編集長が止めるのも聞かずベンはジムの行方を追い始める。それはベンにとってもジムにとっても反戦運動に参加したかつての若者たちの今の姿に出会う旅でもあった。

冒頭、シャロンはテロ行為と誹られた反戦運動について、「合法の元で若者を戦地へ送り出す国家の殺人は決して許されるものではない。」と、とうとうと語る。若い新聞記者のベンはその言葉に何かを感じ取り、体制派の意見に片足を残しながらも、次第に反戦に身を投じた若者達の世界にのめりこんでいく。

ベンの取材がストーリーテラーとなるのだが、興味深いのはウエザーマンのメンバーは警戒しながらもジャーナリストを敵とは見ていない。ジャーナリズムの中立に希望さえ持っているようだ。本来はジャーナリズムとはそういうものなのに、この構図が新鮮に見えてしまう私・・・。RRはかつて「大統領の陰謀」で真実を告発する若きジャーナリストを演じたが、今回ジャーナリストに真実を述べるのを最後まで拒む役だ。


FBIはテロの原因を知ろうともしない、ウエザーマンで中核にいたミミ(ジュリー・クリスティー)は大義のための犠牲に目を背けたままだ。そしてマスメディアは人の生活などおかまいなしで、「どうでもいい真実」で人の好奇心をあおりたてる。ベンが自分の役割に気づき、本来あるべきジャーナリズムに目覚めるシーンに安堵、真実と本質は似て非なるものだ。

若いころマクロに広がった平和への思いは、時とともに家族の平和というミクロな世界にいきつく。それが成熟なのか、諦念なのか。暴力では、戦争では、何も解決できない。