2013年10月15日火曜日

The Company You Keep  ランナウェイ/逃亡者

ロバート・レッドフォード監督・主演。「明日に向かって打て」が私の中のRR。御年77歳と聞くと、なんとなし寂しさが漂ってくるけれど、御本人は意欲的だ。

1960年代アメリカで大きなうねりとなったベトナム反戦運動は、やがて一部の学生が過激化し、その過激派グループ「ウェザーマン」は連続爆破や銀行強盗殺人を起こす。そのかどでFBIに追われ、メンバーは散り散りになり、本名を隠しふつうの生活に身を潜める。それから30年、メンバーの1人シャロン(スーザン・サランドン)は逃げることに疲れ、自首のような形で逮捕される。一方、斜陽の新聞会社ではシャロンの逮捕の記事を指さし、これがスクープだ!と編集長が若い新聞記者ベン・シェパード(シャイア・ラブーフ)のお尻を叩く。へらへらと乗り気ではなかったベンは、取材を続けるうちに優秀な弁護士ジム(ロバート・レッドフォード)に出会うがほどなくジムは逃亡し、今度は編集長が止めるのも聞かずベンはジムの行方を追い始める。それはベンにとってもジムにとっても反戦運動に参加したかつての若者たちの今の姿に出会う旅でもあった。

冒頭、シャロンはテロ行為と誹られた反戦運動について、「合法の元で若者を戦地へ送り出す国家の殺人は決して許されるものではない。」と、とうとうと語る。若い新聞記者のベンはその言葉に何かを感じ取り、体制派の意見に片足を残しながらも、次第に反戦に身を投じた若者達の世界にのめりこんでいく。

ベンの取材がストーリーテラーとなるのだが、興味深いのはウエザーマンのメンバーは警戒しながらもジャーナリストを敵とは見ていない。ジャーナリズムの中立に希望さえ持っているようだ。本来はジャーナリズムとはそういうものなのに、この構図が新鮮に見えてしまう私・・・。RRはかつて「大統領の陰謀」で真実を告発する若きジャーナリストを演じたが、今回ジャーナリストに真実を述べるのを最後まで拒む役だ。


FBIはテロの原因を知ろうともしない、ウエザーマンで中核にいたミミ(ジュリー・クリスティー)は大義のための犠牲に目を背けたままだ。そしてマスメディアは人の生活などおかまいなしで、「どうでもいい真実」で人の好奇心をあおりたてる。ベンが自分の役割に気づき、本来あるべきジャーナリズムに目覚めるシーンに安堵、真実と本質は似て非なるものだ。

若いころマクロに広がった平和への思いは、時とともに家族の平和というミクロな世界にいきつく。それが成熟なのか、諦念なのか。暴力では、戦争では、何も解決できない。

0 件のコメント:

コメントを投稿