読み終えたあとで、泣きそうになってしまった。
私がこの少女達と同世代であったことや、その時代に父の仕事で芦屋の隣に住んでいたことだけが理由ではない。
もっと小さい頃の記憶は白黒ビデオのよう、でも子供から少女に代わる頃からの記憶は、だんだん天然色に変わっていく。自分というフィルターを通して世の中が見えてくるのだろう。そんな風にこの本を読んでいる間中頭の中で記憶に色を付けながら、私の72年がゆっくりと思い出されていた。
その時代は自分がそこに居たというのに、本当に遠い世界に行ってしまったこと。そういう意味では、過去の現実は物語となんら変わらないのかもしれない。そして今までそんな大切な思い出を、無造作にほっぽらかしてしまっていたこと。いろいろな記憶を拾って、つなぎ合わせて、自分のことを思い返すと、72年が私の最後の”子供”の時代だったのかな、という気がしてきた。そう思うと胸が締め付けられるようだ。そして私は自分の羽をどこで折ってしまったのだろう、とふと考えた。そんなことを思っていたら、なんだか泣きたくなってきた。挿絵(寺田順三)を見てもっと泣きたくなってきた。
ワカに幸せになってもらいたいばかりに、安全な線路を敷きかけていた私は、ふと気が付いた。大人になってから振り返って、”記憶が天然色になる時”に彼が豊かな人間関係を送ることが出来れば、きっと幸せな少年時代を迎えることができるのではないのかって。
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